【ビジネス誌・ドラッカーのセミナー掲載記事】全国経営者団体連合会の季刊誌『スクエア２１』

← 85話：【書籍・７つの原則⑮】組織のマーケティング感性を高める【ドラッカー理論による組織改革・企業研修・人材育成】

全国経営者団体連合会の季刊誌『スクエア２１』に村瀬のドラッカー・セミナーの記事が掲載されました。

7月23日（月）＠帝国ホテル・ゴールデンライオン

村瀬弘介（日本リーダーシップ・オブ・マネージメント株式会社代表取締役／ドラッカー学会会員）

『ドラッカーが教えてくれる　人を活かす経営７つの原則』（産業能率大学出版）を上梓したばかりの同氏が、“ドラッカー伝道師“として、日本でもっとも分かり易いドラッカー講義を披露する第三回目です。

今回も非常に濃厚な講義と議論でしたが、そのほんの一部をご紹介します。

■事業を定義することの重要性

　今回は自社の事業を定義することについてのお話です。

事業の定義とは、「自社はいったい何屋であるのか？」ということを明確に定め、ブレークスルーを生む事をいいます。

　事業の定義がサービスを変えた事例に巣鴨信用金庫があります。

巣鴨信金は自分たちの仕事を単なる銀行業務ではなく、「金融ホスピタリティ」、つまり金融界における、おもてなし業であると定義しました。

そのため、銀行業界の常識を破り、通常の9時開店の５分前に開店するサービスや、手数料の無料化、融資の問い合わせの回答も五営業日以内回答など、標準を大きく上回るサービスを展開し、顧客の支持を得る事に成功しました。

　ドラッカーは「業界の常識は非常識だ。業界の常識としていることを疑え」と言いますが、まさに自社を単なる信金ではなく、ホスピタリティ産業と定義することで、業界の常識を破って、ブレークスルーを起こしたのです。

　事業の定義は、働く人の意識さえ変えてしまいます。新幹線の清掃を業務とする「テッセイ」は、自社の仕事を単なる清掃ではなく、ビジネスや旅行へ行く人々を送り出すための「ホスピタリティ業」と定義しました。

そのため、顧客の乗車前に、一列にクルーがならんで行う明るい挨拶の徹底や、派手なベレー帽・アロハシャツできびきびと働く従業員さんのオペレーションの素晴らしさは、世界のメディアで報道されるほど注目を浴びています。

単なる清掃ではなく、ホスピタリティ産業であるという経営者の事業の定義が、従業員さんの士気・行動にまで大きな影響を与えているのです。

　ドラッカーは「自社で働く事を誇りあるものとせよ」と言います。これは非常に重要なことです。

職場で働く人に誇りと主体性をどうもってもらうか、チームメンバーとしての潜在能力・エネルギーをどう爆発させてもらうかいうことが、ドラッカーの人を活かす経営では大事になっていきます。

　また、働く人を見る時には、人の良いところ（強み）を見ていかないと、どんどん悪い面に目が向いていきます。ドラッカーは「人の弱味を見るならば、高い成果は生まれない。

成果を上げたれば、メンバーの強みを見出し、強みに集中しなければならない。」と言います。

社長は従業員の強味を見出し、彼らの自尊心を高めて、さらなる良い仕事へむけて、鼓舞する必要があります。

■差別化を実現する・「Unique Selling Proposition」

　もう一つ、現代マーケティングの非常に大切な概念であるＵＳＰについて解説します。

ＵＳＰとは「Unique Selling Proposition」の略で、自社の商品を選んでもらう「差別化された独自の売り」のことです。そして、その「独自の売り」を社長だけでなく全従業員が顧客に明示できる必要があります。

　みなさんは理由がないのに買っているものが、ありますか。顧客は買う理由がないのに買うものは一つもありません。企業は顧客に対して、なぜ他社ではなく、自社から買わなければいけないかという理由を明示できなければならないのです。

そして、ＵＳＰは単なる製品の機能や性質ではありません。顧客の購買動機となり、顧客の喜びの言葉で説明できる必要があります。

　ＵＳＰを見出すためには、商品が売れた瞬間に「なぜ当社を選んでくれたのか？」と聴くことが肝要です。ドラッカーは「企業の思っていることとお客様の思っていることは違う。様々なお客様のことを妄想してはいけない。必ず直接聞きなさい」と言います。

　ＵＳＰの経営上の効果は他社にない差別化を打ち出すことがひとつ、また、それにより社内の顧客への提供するサービスへについての規律の役割も果たします。

というのも、企業がＵＳＰを打ち出すことは会社とお客様の約束を作り出すことであり、それは全社員が守るべき理念でもあるからです。