社員のやる気を最大化! エンゲージメント向上で業績アップを狙う方法

今回は中小企業の社長が従業員のエンゲージメントを高め高い業績を実現する方法をドラッカーコンサルタントの村瀬弘介が解説します。

この記事でまとめたこと

従業員(社員)エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントとは、従業員が会社の企業理念に共感し、企業の業績向上のため自発的に貢献したいと思う意欲のことを指します。
「従業員の企業に対する信頼の度合い」や「従業員と企業とのつながりの強さ」で、エンゲージメントの向上は組織の業績に大きく関連することが近年の調査で分かっています。

日本企業のエンゲージメントの課題

特に日本企業では、エンゲージメントの課題が非常に大きくなっています。
以下は日経新聞の調査結果です。特に日本企業でやりがいを持って働いている社員さんが少ないことがわかりますね。

弊社にご相談頂く社長様でもエンゲージメントの向上と社員の離職に悩まれる方は年々増え続けています。
米ギャラップが13日まとめた「グローバル職場環境調査」によると、仕事への熱意や職場への愛着を示す社員の割合が日本は2022年で5%にとどまる。サンプル数が少なくデータがない国を除けば、調査した145カ国の中でイタリアと並び最も低い。4年連続の横ばいで、世界最低水準が続いている。(出典:日本経済新聞より)

社員が働くことに悦びを感じなければ成果はでない

行動科学の理論では、「成果=感情×何をするか?」 という有名な公式があります。
同じ仕事をするにしても、前向きな感情を持って行う場合と、いやいや行う場合では、仕事の成果に大きな差が出てくることが分かっています。

同じ業務でもエンゲージメントの高い組織では、より高い成果につながるのです。

ちなみに、マネジメントの父・ドラッカーも言います。
「成果を上げるためには、仕事を生産的(やりがいのある)なものにせよ。」(マネジメント:ドラッカー著)と。

人こそ経営の最大の資源です。そのため、事業の成長は、いかに社員の生産性を引き出すか、つまりやりがいを持って仕事に取り組んでもらうか、つまりエンゲージメントを高めることができるかに大きく左右されるのです。

エンゲージメントを高めることによるメリット

さて、エンゲージメントを高めると事業にはどのような効果があるのでしょう。
列挙してみましょう。次の点が考えられます。

(1)生産性が高まる
エンゲージメントの高い社員はモチベーションが高く、組織の生産性が向上する。

(2)社員の定着率が上がる
社員が職場に満足していると、離職率が低下し、採用コストの削減つながる。

(3)イノベーションが進む
エンゲージメントが高いと、組織メンバーが新しいアイデアを出しやすくなり、変化と革新が進む。

(4)顧客満足度の向上につながる
社員が仕事に熱心なほど、顧客へのサービスが向上し、顧客満足度も高まる。

(5)企業イメージがあがり、採用力のアップにもつながる
社員が企業を支持し、肯定的に語ることで、企業のイメージが向上し、採用力のアップにもつながる。

(6)チームの成果が高まる
高いエンゲージメントはチーム内のコミュニケーションを促進し、チームとしての成果が高まる。

(7)リスクの軽減につながる
社員が職場に満足していると、不正行為や安全違反が減少する。

(8)事業の永続性が高まる
高いエンゲージメントを持つことで、事業の持続可能性が高まる。

(9)社員からの改善提案が積極的にあがる
エンゲージメントが高い社員が主体的に組織に参画する傾向が高まり、組織全体の改善に繋がる。

エンゲージメントの高い企業は好業績であるという結果

実際に、業績のいい企業はエンゲージメントが、高いことが結果として現れています。例えばスターバックス、アップル、パタゴニアなどの社員は人一倍カルトと言われるほど愛社精神が高いことで有名です。
そのため、エンゲージメントと高めることは、事業の業績をあげるために、いまや必須の経営戦略となのです。

エンゲージメントを高めるために社長がやるべきこと

【1】 自社のエンゲージメントの現状を理解する

エンゲージメントを測定し、現在値を知ることです。社員が自社に対してどのような想いを持っているのか、日々の業務に関して何に熱意を感じ、何にがっかりしているのか、社員アンケートを通じ、エンゲージメントの現在値をすることが重要です。現在地がわかって初めて対策を立てることができるのです。

【2】 エンゲージメントを上げる具体的なアクションプランを実行する

次に実際にエンゲージメントを高める具体的施策を行っていきます。
以下のような施策が有効になります。

従業員エンゲージメントを上げるための施策8選

【1】明確な経営の方向性(ビジョン)を共有する

自社のミッション・ビジョンを明確に示し、従業員一人ひとりがその実現に貢献していると実感できるよう、経営計画書として明文化した上で、朝礼や社内報、イントラネット等を活用し、繰り返し従業員に伝えることが重要になります。

【2】目標管理制度(MBO)を導入する

MBOは、従業員自らが上司と相談して、自ら目標を設定し、その達成度合いを評価し成長するための制度。目標管理制度(MBO)を導入することで、従業員が自分の役割・責任を明確に意識し、主体的に成長するようになります。また、定期的な目標設定面談を通して進捗状況を共有することで、成長に向けての動機付けをおこなったり、仕事の悩みを解決する助けにもなります。

【3】成果を明確にし、公正な人事評価を行う

人事評価制度の公平性を確保し、従業員の納得感を高めることが大切です。具体的には、評価基準を明確化し、従業員に周知すること、評価項目を業務内容と関連付けること、多面的な評価も取り入れることなどが挙げられます。また、評価結果については、フィードバック面談などを通じて、従業員に丁寧に説明することで納得感が高まります。

【4】コーチングでコミュニケーションを高める

一方的な指導ではなく、従業員の話を丁寧に聞き取り、課題や悩みに寄り添いながら、成長を促すコーチングの手法が有効。目標達成に向けた具体的な行動計画を一緒に作成したり、PDCAの振り返りを通して成長を促すことで、従業員の能力を最大限に引き出すことにもつながります。

【5】社員が成長を支援する人材育成制度を導入する

階層別研修、職種別研修など、効果的な研修メニューを用意し、従業員が自身で成長する支援をできる環境を提供することは、エンゲージメント向上に欠かせません。研修と自己啓発の促進によって社員の人間力・能力を高めることでより組織へのエンゲージメント、帰属する意義も高まります。

【6】社員の成長キャリアを明確にする

従業員が将来のキャリアプランを描き、目標を持って仕事に取り組めるように、明確なキャリアパスを示すことが大切です。キャリアパスを示す際には、画一的なものではなく、各従業員の個性や強みを活かせるような多様な選択肢を用意することが重要です。また、定期的な面談を通して、従業員のキャリアプランを確認し、実現に向けてサポートできる体制を整えます。

【7】社員の意見を吸い上げ、改善につなげる制度をつくる

従業員が会社に対して意見や提案をしやすい環境を作ることも大切です。従業員満足度調査や提案制度などを導入し、従業員の声を積極的に収集しましょう。また、提案制度を導入することで、従業員が自発的に業務改善や新サービスのアイデアを提案できる環境を作ることもできます。

【8】働く環境・オフィス環境の改善を行う

快適なオフィス環境は、従業員の集中力やモチベーション向上に繋がります。オフィス環境の改善やリフレッシュスペースの設置、フリーアドレス制の導入などが効果的なことが、私のクライアントの実例でも出ています。

次に各企業で実施されている、従業員のエンゲージメントを高める具体策をみてみましょう。
(以下は大企業の事例ですが、中小企業でも工夫して実践可能なものです。)

エンゲージメントを高めた各企業の具体事例

【1】グーグルの20%ルール

グーグルでは、社員が通常業務から20%の時間を割いて新しいプロジェクトに取り組むことが奨励されています。この政策により、GmailやGoogle Newsなどの革新的な製品が生まれることに繋がったのです。

【2】ザッポスの企業文化

オンライン小売業者Zapposは、社員が会社の文化に合うかどうかを重視して採用を行います。新入社員には、トレーニング期間後に退職を申し出ると一定の金額を受け取れるオファーが提示され、このことは、会社へのコミットメントの確認に繋がっています。

【3】ドリームワークスのオープンコミュニケーション

アニメーションスタジオのDreamWorksは、社員が自由に意見を交換できるオープンなコミュニケーション環境を提供しています。社内のあらゆるレベルの社員がアイデアを自由に表現できる文化が、創造的なアウトプットに繋がっていると言っています。

【4】ネットフリックスの自由と責任の文化

Netflixは「自由と責任」の文化を掲げており、柔軟な勤務時間や無制限の休暇政策を提供しています。社員に高い自由度を与えることで、エンゲージメントとパフォーマンスが向上しているのです。
ここまで、従業員のエンゲージメントを高める重要性と実際の施策について解説しました。
さらに話を深め、従業員のエンゲージメントの本質とは何かについて、私の専門であるドラッカーの視点からも考えてみましょう。

エンゲージメントの本質とは、働く人の幸せにある

エンゲージメントの本質は社員の幸せを願い、働く人を活かすこと
エンゲージメントの根本は、社長として社員をいかに生かすかということ。つまり、組織として、働く人にいかにやりがいをもって、仕事を生産的にしてもらうかということです。

私の専門である、ドラッカーも言います。
「マネジメントとは人のことである。経営者としていかに社員を幸せにできるか、それを考え抜くことが重要である。」と。(出典:マネジメント・ドラッカー著)

エンゲージメントを高め、働く人が本当に幸せになりたい会社をつくられたいと思う社長は、是非、人間中心の経営学であるドラッカーのマネジメントを学ばれることをお勧めします。ドラッカーを学べば、社長として以下に人を活かすべきか、そして幸せな組織をつくるために何に取り組めばいいかが明確になります。

組織は人でできています。人の成長が組織の成長につながります。
あなたの会社で本当に人を活かし、輝かせたい、人間として魂から従業員に成長してもらいたいと思う経営者は、是非、ドラッカーを学ばれることをお勧めします。

【3時間で分かる!感動ドラッカー・マネジメント講座】

以下の動画では、村瀬が、ドラッカーが説いた「人を活かす会社3つの条件」について解説にしています。この3つの条件は、社員のエンゲージメントを考える際に非常に参考になる考え方です。併せてご覧ください。

ドラッカーが語る・人が生かされる会社の3つの条件

エンゲージメントの本質は、人を活かすことです。
社長として、「社員の幸せを心から願う想い!」がその根底にあります。

ドラッカーの人間中心の経営を学べば、エンゲージメントの高い組織をつくれる

エンゲージメントを高め、社員の幸せを願い、業績アップにつなげるためにはドラッカーを学ぶことがお勧めです。
経営学の父・ドラッカーは歴史上はじめて、経営の本質は利益ではなく、社会や人が幸せになることだ、人が幸せにならない会社、社会に意味はないと喝破しました。

この点は、私の書籍「ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則」の序章で熱く執筆させて頂きました。
以下の動画で朗読版がありますので、併せてご参照頂けましたら幸いです。
社長としていかに人を活かし導いていくか、リーダーの魂に火をつける内容になっております。

【朗読:ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則】

この記事のまとめ

従業員エンゲージメントは業績に直結する

従業員エンゲージメントは、社員が企業理念・ビジョンに共感し、企業の業績に自発的に貢献する意欲のことを言います。これは「従業員と企業とのつながりの強さ」や「企業への信頼感」を示しています。エンゲージメントの高い組織は業績も高いことが実証されており、エンゲージメントと業績は関連することが分かっています。

日本企業のエンゲージメント課題

日本の多くの企業ではエンゲージメントが低い。これは国際的にも低水準であることが指摘され、やりがいの欠如や高い離職率が課題となっている。

エンゲージメント向上のメリット

エンゲージメントを高めることで、生産性向上・離職率の低下・イノベーションの促進・顧客満足度の向上・企業イメージの向上など、多岐にわたるメリットがある。これらはすべて組織の成果に直結する。
そのため。経営者はすぐにでもエンゲージメントの向上に取り組むべきである。

具体的なエンゲージメント向上策

エンゲージメントを向上させるためには、経営理念・ビジョンの共有、目標管理制度の導入、公正な人事評価制度、コーチングによる面談、人材育成制度の導入などが効果的。また、社員の意見を反映させて働く環境を改善することが必要となる。
エンゲージメントの本質は、社員の幸せを第一に考え、人間を中とする経営を行うことです。ドラッカーを導入し、経営に活かすをことで、最大限に人を活かし、人の働き甲斐を最大化して成果を上げる経営をすることができる。


■ブログ執筆者 ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介

2002年、大学卒業後、株式会社KUBOTAの人事教育部で全社の人材育成を担当。2011年、経営と起業家精神をより深く学ぶために日本経営道協会(コンサルタント)に転職。

2013年、小宮一慶氏の経営する株式会社小宮コンサルタンツに経営コンサルタントとして転籍。本格的な経営コンサルティングを開始。マネジメントを学ぶ中で、【ドラッカーの人を活かす経営】との運命的な出会いを果たす。

人が活かされ、高い成果を上げる幸せな企業をつくることこそ自分の天命だと悟り、2017年独立。「高い理想と自己犠牲の精神で、人の魂の成長に貢献する」「リーダーの人格の向上に奉仕する」をコンセプトに、使命感を持って日々の業務にあたっている。

講師としても依頼が絶えず、全国の商工会議所、経営者団体など各種経済団体でのセミナー講師、上場企業・中堅企業での研修講師を年間200日以上務める。「情熱的でドラッカー愛に溢れる講義は、まるでドラッカーのイタコだ」「ドラッカーが降りてきた」「マネジメントの真髄を見た」と熱狂的に支持する経営者が後を絶たない。

著書:『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則(産業能率大学出版部・Amazon【企業経営部門】第2位)

■ドラッカーが圧倒的に分かる!活かせる!イノベーションが起こすドラッカーの伝道師です。


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