組織の次世代を担うマネージャーを育成することは、どの企業でも大きな課題ですよね。
私は、経営コンサルタントしてドラッカー理論に基づく研修で、これまで多くの卓越したマネジメント人材を育成してきました。
今回は、マネジメント人材を育成するための研修で伝えるべきコンセプトを10個解説します。

■1自己の強みを意識させる

ドラッカーは言います。
「人が成果を上げるのは強みによってのみである。弱みは克服しても平凡になることさえ疑わしい。」と。(マネジメント:ダイヤモンド社)

マネージャーが成果を上げるためには、自己の弱みではなく、強みを意識しなければいかません。マネジメント人材育成の研修においても、まずは、自身の強みを発見し、強みからいかに卓越した成果を上げることができるかということを考えてもらいます。

人が成果を上げるのは強みによってのみ、弱みからでは高い成果を上げることはできません。組織をマネジメントする人材は、まず自己の強みを明確に意識して仕事に臨む必要があるのです。

■2働く仲間の弱みでなく、強みを活かすこと

ドラッカーは言います。
「最強の組織とは、強みの上に強みを築く組織である。」
「組織の目的とは、人の強みを爆発させ、弱みを中和することにある。」(マネジメント:ダイヤモンド社)

組織をマネジメントする人材は、メンバーの個々の強みがわからなければなりません。そして、メンバーが強みを用いて、強みから卓越した成果を上げられるように仕事を設計するのです。

強みからでなければ、メンバーは高い成果を上げることはできません。チームのメンバーは、お互いの弱みを補い合って意味無きものとし、強みのみが際立つ組織をつくる必要があります。最強のチームとは、メンバーの強みのみが引き出され、弱みはメンバー同士のサポートによって中和され、意味をなくす組織です。

マネジメント人材を育成する研修においては、メンバーの強みにフォーカスして、リーダーは「個々の強み」を活かしあう、チーム作りをできるように育てなければ、成果は生まれないのです。

そのため、ドラッカーは言います。
「部下の弱みを見てはいけない。弱みを見るものは成果を出せないが故にマネージャー失格である」と。(マネジメント:ダイヤモンド社)

■3メンバーに仕事の「成果」を明示すること

マネジメント人材は、チームに高い成果を上げさせなくてはなりません。
そのためには、チームの成果を明確に定義し、メンバーが成果に向かって働けるように仕事を設計しなければなりません。

ドラッカーは言います。
「成果を上げるためには、成果を明確に定義する必要がある。」と。【成果明確化の原則】(経営者の条件:ダイヤモンド社)

なんとなく働くことと、成果を上げることは全くことなります。チームに成果を上げるためには、チームの成果を明確にし、メンバーの働きを成果に集中する必要があります。

マネジメント人材は、仕事の成果を明確に定義し、メンバーを成果に集中させることで、チームに高い成果を上げさせます。

■4貢献意識をはぐくむこと

マネージャーは、組織全体をして、高い成果を上げさせる必要があります。ひとりだけが成果を上げ、組織はどうなってもいいと思う人では、部分最適となってしまうため組織全体に成果をもたらすことはできません。

組織全体に成果を上げるためには、各メンバーが、自己のやりたいことよりも、組織全体に求められているものは何かを意識して、全体最適になるような行動する必要があります。

マネジメント人材を育成する研修でお伝えするのは、貢献を意識をもった人間が成果を上げられるということです。成果を上げるマネージャーは、組織全体の成果から逆算して、自分のパートはいかなる貢献をすべきかということを考えます、

成果を上げるマネージャーは、音楽で言えば、ソロ人材でなく、全体のハーモニーを意識するオーケストラのメンバーにならなければならないのです。

貢献を意識して、はじめて高い成果を出すことができます。貢献意識をもった人材をいかに育成できるかということは、マネジメント研修の大きなテーマです。

■5自己啓発を動機づけること

現代は知識社会と呼ばれます。仕事で最新の知識も、半年も勉強をさぼり、研鑽を怠れば、時代遅れになってしまいます。知識労働者は、大学を卒業した後こそ、継続して学び続けなければなりません。

組織をマネジメントする人材こそ、強い意識をもって、継続学習と自己啓発に励む必要があります。また、自己が学ぶのみならず、チームメンバーを動機付け、学び成長し続ける組織(学習する組織)にする必要があります。

マネジメント人材を育成する研修でお伝えすることですが、リーダーは継続学習し、自己の刃を研ぎ続ける精神が重要となるのです。知識社会では、リーダーは、一生学び成長し続ける覚悟なしには、組織に成果を上げることはできません。

組織が学び続けることの重要性についてドラッカーは以下のように述べています。
「組織が成長するのは、優秀な人を取るからではない。文化と風土によって自己啓発を動機づけるからである。」と。(創造する経営者:ダイヤモンド社)

マネジメント人材を育成する際には、研修期間が終わっても常に学び続けること、自己研鑽し、仕事に関する知識をアップデートし、成長し続ける重要性を伝える必要があるのです。

■6ビジョンを構築すること

ビジョンとは組織の進むべき方向性を示した羅針盤・青写真です。ビジョンが示されなければ、組織がどの方向性に進もうとしているのか、メンバーが理解することはできません。

現代の多くのマネージャーがリーダーシップを発揮できない原因の一つは、明確なビジョンが確立できていないことにあります。メンバーに方向性が示せていないのです。

ドラッカーは言います。
「リーダーはビジョンを示さなければならない。ビジョン無き者は、事務長にすぎない。それでは、リーダー失格である。」と。(プロフェッショナルの原点:ダイヤモンド社)

私のドラッカー研修でも、マネジメント人材に、いかにビジョンを確立してもらうか、ビジョンの構築のワークに多くの時間を使います。

・ビジョンをどのような視点でつくるのか?
・どのような要素を持つビジョンであればメンバーは鼓舞されるのか?
・メンバーを動かすビジョンとは何か?

マネジメント人材の育成においては、ビジョン研修に半日の時間を使うほど、ビジョンは重要です。ビジョンの具体的な構築法、またチームへの効果的な提示の仕方についは、こちらのブログで詳しく解説しています。(ビジョンの作り方・クリック

■7使命観をもつこと

経営は順風満帆ときばかりではありません。むしろ苦境に入って、先が見えないことも多くあります。そのような時に大切になるのが使命観。なぜこの仕事を行っているのか、何のためにこの組織は存在しているのか、とういう、仕事への使命感を持つことです。

使命観がある組織は、苦境に負けることがありません。組織と仕事の意義が明確化され、メンバー各自が、成し遂げねばならない未来に対する希望に燃えているからです。使命観を持って働くのと、ただ働くのでは雲泥の差があります。

人が頑張れるのは、いかに働くかという仕事の意味・大義があるからです。組織をマネジメントする人材は、メンバーに使命観をもたせなければなりません。たんなる業務ではなく、成し遂げるべき「使命」として仕事を行うチームは強いのです。リーダーは組織にとっての使命を考え抜き、チームに明示しなければならないのです。

ドラッカーも言います。
「リーダーがまずなすべきことは、組織の明確な使命を確立し、それをチームの誰からも分かるように明示目にすることである。」(現代の経営:ダイヤモンド社)と。

強いチーム、そして高い成果を上げるマネジメント人材は、間違いなく使命観をもっているのです。強い使命観に導かれた人材を育成することは、弊社のドラッカー研修でも、特に力を入れているところです。

■8顧客志向を持たせること

ビジネスの王様はお客様です。組織は、お客様に貢献して初めて成果を上げることができます。
ドラッカーは言います。
「組織の中にあるのはコストだけである。利益と成果は顧客のもとにしかない。」と。(経営者の条件:ダイヤモンド社)

マネジメントとは、組織の内部を管理することだけを意味するわけではありません。内部管理のみでは、一銭の成果も生み出すことはできません。マネジメント人材は、組織内部はもちろん、市場・顧客といった外部への取り組みに力を入れなくてはいけません。

顧客・市場についての取り組みをマーケティングといいます。より顧客から支持される組織をつくる・顧客との関係性を深くする・ライバルに差別化して、より商品が売れる状況をつくる・これらはすべてマーケティングという仕事です。

そのため、マネジメント人材の育成において、ドラッカー研修では、なによりもマーケティングの理解と実践に力をいれています。事業の成功のためには、顧客をマネジメントしなければならないのです。

ドラッカーは言います。
「マーケティングこそ、経営の第一目標である。」(マネジメント:ダイヤモンド社)

実は、マネジメント人材の育成で最も重要なのはこの点です。内部管理的な管理職をいくら研修で育成しても、業績が上がることはありません。顧客・市場志向のマーケター人材を育成することこそ、マネジメント研修の一番の目標です。

マネジメント人材の育成を誤解してはいけません。研修で真に育てるべきは、内部管理志向の管理職ではなく、市場に向けて機会を追求するマーケター人材なのです。

内部をマネジメントできるのと同様、顧客・市場という外部をマネジメントできる(これをマーケティングといいます。)人材を育成すること、これこそ、マネジメント研修では最も大事なことです。

■9イノベーションの精神を持たせること

市場・顧客は変化してやみません。そのため、組織は絶えずイノベーションをしていく必要があります。組織をマネジメントする人材と、いうと、いかにも組織内部を管理するリーダーをイメージしますが、この考え方は間違っています。

マネジメント人材は、変化する市場・顧客に合わせ組織を変革していくイノベーション人材でなくてはなりません。

ドラッカーは言います。
「市場は変化してやまない。組織はイノベーションを常としなければならない。」
「変化する時代において一番危険なのは、自ら変化しないことだ」(現代の経営:ダイヤモンド社)

マネジメント人材の育成においては、変化を担うイノベーション思考を定着させ、みずからが組織を先頭に立って変革していく、チェンジリーダーに育てる必要があります。

ところが、一般のマネジメント人材の育成、研修においては、いまだ、ホウレンソウをはじめとする「内部管理のスキル」ばかりが重視されています。これは大きな誤りなのです。

ドラッカーは言います。
「これからの管理職は、内部管理的であってはならない。起業家志向でなくてはいけない。」と。(現代の経営)

経済が右肩上がりの時代では、トップに言われたことを遂行していけば成果をあげることができました。しかし、市場の変化が激しくなった現在においては、自ら変化の兆しをみつけ行動できる人材・変化の先頭にたてるチェンジリーダーを育成する必要があります。

ドラッカー研修で行うのは、イノベーションを起こせるチェンジリーダとなる人材を育成することです。ドラッカーのマネジメントは、変化をマネジメントする哲学と言われれます。ドラッカー研修では、市場の変化を機会にできるチェンジリーダーが育つのです。

■10真摯さを持った人材であること

最後は、組織をマネジメントする人材として持つべき、大切なマインドの話です。マネジメント人材には、さまざまな経営スキルが求められます。しかし、どのようなスキルよりも重要なのは、人間的としての「真摯さ」をもっていることです。

ドラッカーは言います。
「リーダーは真摯でなくてはならない。真摯でないものはリーダーになる資格がない。」(マネジメント:ダイヤモンド社)

マネジメント人材にとって、スキルがあるのは当たり前です。それよりも大切なことは、人間として組織の理念、メンバー、顧客に対して、そして自己の信念に対して真摯(誠実)であることなのです。人材の育成過程において、能力は、後天的に学び高めていくことができます。しかし、人間性としての真摯さというものは、もともともっていなければなりません。

ドラッカーは言います。
「リーダーの持つ真摯さとは、生来持ってなくてはいけない資質である。」
「真摯はセミナー・研修で身に着けることはできない。」(マネジメント:ダイヤモンド社)

もともと真摯さを持つリーダーだからこそ、人材育成において様々なスキルをみにつけ、組織をさらに高いレベルへ成長していくことができます。しかし、真摯さがない人間が、いくら様々な経営スキルを身に着けたところで、その今回となく人格を補うことはできないのです。

マネジメント人材を育成する際には、前提として、研修の参加者にも、真摯さを強く求めます。リーダーは人間としての真摯さに徹することが重要です。ドラッカー研修で伝えるには、マネジメント人材に必要なスキルだけではありません。リーダーとしてあるべき、人間性・哲学を学び、体得していただきます。

なぜならば、リーダーの育成においては、スキルよりもマインド・哲学が本質であり、組織を最終的にマネジメントできるかどうかは、リーダーの精神性をどう醸成するかにかかっているからです。

■ドラッカー研修では、組織に高い成果を上げるマネジメント人材を育成することが可能です。

いかがでしたか、今回は、「マネジメント人材を育成する研修で伝えるべき10のコンセプト」をについてまとめました。

マネジメント人材の育成は、組織に命運を担うほど重要なため、経営者が本腰を入れて取り組まねばいけない課題です。

そして、弊社のドラッカー研修を実施いただくことで、組織に高い成果を上げるマネジメント人材を育成することが可能です。

ドラッカーは、人材育成について次のように語っています。
「組織に優劣があるのではない。(マネジメントを)学んでいるかいないかの違いである。」(経営者の条件:ダイヤモンド社)

当社は、ドラッカー理論を用いたマネジメント研修について、ナンバーワンの実績があります。マネージャー・経営幹部の育成のために、どのような研修を行えばよいのかにお悩みの経営者・人事担当者は、お気軽にご相談下さい。

(研修の導入にあたってのご相談は無料です。)

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ブログ執筆者 ドラッカー専門の経営コンサルタント 村瀬弘介

2002年、大学卒業後、株式会社KUBOTAの人事教育部で全社の人材育成を担当。2011年、経営と起業家精神をより深く学ぶために日本経営道協会(コンサルタント)に転職。

2013年、小宮一慶氏の経営する株式会社小宮コンサルタンツに経営コンサルタントとして転籍。本格的な経営コンサルティングを開始。マネジメントを学ぶ中で、【ドラッカーの人を活かす経営】との運命的な出会いを果たす。

人が活かされ、高い成果を上げる幸せな企業をつくることこそ自分の天命だと悟り、2017年独立。「高い理想と自己犠牲の精神で、人の魂の成長に貢献する」「リーダーの人格の向上に奉仕する」をコンセプトに、使命感を持って日々の業務にあたっている。

講師としても依頼が絶えず、全国の商工会議所、経営者団体など各種経済団体でのセミナー講師、上場企業・中堅企業での研修講師を年間200日以上務める。「情熱的でドラッカー愛に溢れる講義は、まるでドラッカーのイタコだ」「ドラッカーが降りてきた」「マネジメントの真髄を見た」と熱狂的に支持する経営者が後を絶たない。

著書:『ドラッカーが教えてくれる 人を活かす経営7つの原則(産業能率大学出版部・Amazon【企業経営部門】第2位)』